【壊憲・改憲ウォッチ(50)】アメリカの代わりに戦わされる自衛隊
飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)
【1】 最初に派兵される「水陸機動団」、戦地となる「沖縄」
『毎日新聞』2025年3月20日付には、「台湾有事念頭に…日米『南西シフト』を整備 合同訓練『鉄の拳』公開」という記事が掲載されています。
2025年3月1日。米軍施設「金武ブルー・ビーチ」で日米軍事訓練「アイアン・フィスト」が公開されました。
公開されたのは沖縄駐留の米海兵隊と陸上自衛隊の水陸機動団による「着上陸作戦」でした。
「アイアン・フィスト」に関して米海兵隊幹部は「一緒に活動する可能性が高い部隊同士が、最も活動する可能性が高い地域で演習を実施する、それが最も効果的」と発言しています(ゴシックは飯島強調)。
「一緒に活動する可能性が高い部隊」、「最も活動する可能性が高い地域」という発言から、米海兵隊幹部は、最初に戦地に派遣されるのは長崎の水陸機動団、戦場は沖縄と考えていることになります。
【2】 西大西洋でも自衛隊が戦うことを求めるアメリカ
2025年3月30日、中谷防衛大臣とヘグセス米国防長官は防衛省で会談を行いました。
会談後の共同記者会見で、ヘグセス国防長官は以下の発言をしました(自衛隊の準機関紙『朝雲』2025年4月3日付、4月6日放映「サンデーモーニング」)。
「西太平洋で有事に直面した場合、日本は前線( frontline )に立つことになる」。
「日本は平和を求めている。しかし平和を求めるのであれば、戦争の準備をする必要がある」。
「協力して戦闘力 殺傷力 即応力を高めていくことを期待する」。
ヘグセス国防長官は、西大西洋でも自衛隊が前線で戦うことを日本に要求しました。
【3】 能動的サイバー防御法案
(1)はじめに
4月8日、能動的サイバー防御法案が衆議院本会議で可決されました。
日本へのサイバー攻撃を防ぐために必要だと自公政権は主張してきました。
ただ、「能動的サイバー防御」もアメリカの要請に基づくものであり、在日米軍へのサイバー攻撃を防御するために日本国民の通信情報を収集し、場合によっては自衛隊による外国へのサイバー攻撃すら可能にするものです。
「能動的サイバー防御法案」は以下の2法案です。
①「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案」
②「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」
本稿では政府資料の用語にならい、②を「整備法案」とします。
(2)アメリカの要請に基づく能動的サイバー防御
『朝日新聞』2024年7月24日付では以下の紹介がされています。
・「『能動的サイバー防御(ACD)』導入をめぐり、日本政府が民間通信事業者から取得した通信情報を米国と共有する方向で調整に入った。政府は新法などの法律に明記する考えで、米側にはこうした方針をすでに伝達」。
・「米国への情報提供・共有は、日本側にACD導入を強く求めてきた米側の要請が背景にある」。
・「政府は通事業者に通信情報を提供させる新法制定を検討」
要約すれば、能動的サイバー防御は、
・アメリカの要請により、
・政府は民間通信業者から国民の通信情報を収集し、
・民間通信業者から得た情報をアメリカに提供し、
・そのための法整備、
以上を岸田自公政権はアメリカに約束しました。
(3)在日アメリカ軍基地防御のための能動的サイバー防御
実際に法案を見ても、能動的サイバー防御法案では在日米軍基地防御のため、警察や自衛隊が先にサイバー攻撃を実行することも想定されています。
「整備法案」4条では「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協定及び安全保障条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊が使用する特定電子計算機」が防御対象とされています。
さらに「〔上記の〕特定電子計算機に対する同項の警護は、アメリカ合衆国の軍隊から要請があつた場合であつて、防衛大臣が必要と認めるときに限り、自衛官が行うものとする」とされています(〔 〕内は筆者補足)。
在日米軍防護のため、場合によっては自衛隊が先に海外へのサイバー攻撃すら認めるのが「能動的サイバー防御法案」です。
【4】まとめ
最近も安倍・菅・岸田自公政権下で、アメリカの戦争でアメリカの代わりに自衛隊が戦う法制度が整備され、訓練も行われてきました。
いまもそうした事態が現在進行形です。
ヘグセス国防長官は、西大西洋有事でも自衛隊が前線で戦うことを日本に求めました。
「能動的サイバー防御」は、在日米軍防護のために自衛隊が先に海外へのサイバー攻撃すら認めるものです。
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