【壊憲・改憲ウォッチ(36)】「公明が立民に最後通告? 改憲会派だけで改憲案づくり示唆」―2023年11月30日衆議院憲法審査会
飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)
タイトルは『産経新聞』2023年12月1日付〔電子版〕の見出しです。
憲法審査会についての『産経新聞』の記事の内容には賛同できないことが多いですが、11月30日の衆議院憲法審査会の上記の見出しについてはその通りでした。
公明党の北側一雄議員は議員任期延長の改憲論について「議論が相当に詰まっているのは間違いない」と発言した上で、立憲民主党が賛成しない場合、「賛成会派だけで条項案についてもやはり検討していくようなステージに入ってきていかざるを得ないんじゃないかな、その時期が近づいてきているように思う」などと発言しました。
公明党は立憲民主党を抜きにして、改憲5会派だけで改憲条文案づくりをすすめることを示唆しました。
日本維新の会の青柳仁士議員は、広報協議会の関係規定の議論について、立憲民主党・社民党と共産党を念頭に置き、改憲阻止のために「無為に遅らせる議論」を「工作」とした上で、「全会一致」でなく、「機が熟すれば多数決という民主的な手続でなされるべきです」と発言しました。
国民民主党の玉木雄一郎議員も「少なくとも4党1会派ではおおむね意見の集約が図れていると思います」と発言した上で、「議員任期の特例延長規定を創設するための憲法改正の条文案を作る作業部会の設置についてぜひお願いしたい」と発言しました。
2023年11月、新潟県で護憲大会が開かれました。
パネリストとして参加していた新垣邦男議員は、「国政に出る前は北中城村長を長くやっていたんですが、国会というところは格式高い、すごく高邁な議論をしているんだろうなと思っていたんです」と述べていました。
新垣議員が批判するように、衆議院憲法審査会ではレベルの低い主張がされています。
日本維新の会や国民民主党は「自民党の熱意と本気度がなかなか感じられない」(玉木雄一郎議員)などと自民党を批判しました。
公明党も強行的な憲法審査会の運営を示唆しました。
11月30日の憲法審査会の最期に発言したのが石破茂議員でした。
彼は、たとえば以下の主張をしました。
「なぜ〔参議院の〕緊急集会ではだめなのかという議論が私は十分だと思っていません」。
日米地位協定について、石破氏が防衛庁長官であった2004年に沖縄国際大学にCH53が墜落したときに日本の警察が全く入れなかったことなどを例に挙げ、「本当にそれが独立国家のあるべき姿か」と批判し、「地位協定の改定も含めて早急に議論しなければ、独立主権国家日本たり得ない」と発言しました。
私は折に触れ、「日本維新の会や国民民主党の主張を聞くと、自民党がまともに見える」と発言してきました。
たとえば日米地位協定や憲法に関する主張や結論、石破議員と私は根本的に違いますが、それでもきちんと現実を踏まえて丁寧な議論をしようとする姿勢はそれなりに感じられます。
一方、圧倒的多くの国民が求めてもいないのに憲法改正国民投票を「国民の権利」などと発言し、まだ十分な議論も尽くされていないのに公明党、日本維新の会、国民民主党は強行的な手続・手段を主張します。
こうした状況で改憲の条文案が作成され、改憲が進むことが本当に国民のためなのでしょうか?
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