【壊憲・改憲ウォッチ(17)】統一協会と濃厚接触の自民党の「改憲」
飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)
自民党はさまざまな形で「憲法改正」の案を発表し、憲法改正にむけた運動をしてきました。そして自民党の憲法改正の運動は統一協会から濃厚な支援を受けてきました。また、自民党による憲法改正の主張は統一協会に有利になるか、統一協会の影響を否定できない内容になっています。
【1】統一協会の濃厚な支援を受けてきた自民党の選挙・憲法改正運動
(1)選挙で統一協会の支援を受けてきた自民党
統一協会は長い間、自民党を選挙で支援してきました。「FNNプライムオンライン」2022年10月8日付の記事等によれば、憲法改正のために政権の座につくことを望んだ安倍晋三氏は統一教会とのつながりを深めていきました。2022年の参議院選挙でも、安倍元首相の側近である井上義行議員は安倍元総理の差配で票を集めたと言われています。有田芳生氏によれば、2022年の参議院選挙でも憲法改正発議に必要な3分の2の議席を獲得するため、統一協会は自民党だけでなく維新の会や国民民主党も支援していたとのことです。
(2)統一協会の支援を受けてきた自民党の憲法改正運動
自民党は憲法改正運動でも統一協会の支援を受けてきました。ここでは学生集団UNITE(ユナイト)を紹介します。安倍自公政権は2015年、世界中での自衛隊の武力行使が可能になる「安保法制」を成立させようとしました。安保法制に対してはさまざまな反対運動が各地で展開されました。安保法制反対のため、学生たちの集団SEALDs(シールズ)が結成され、各地で抗議活動をしました。2016年1月18日、 SEALDsに対抗する、保守系の学生グループ「ユナイト」が結成され、安倍政権支持、憲法改正を求めて各地で活動しました。ユナイトは統一協会の集団です。2016年6月18日、ユナイトのメンバーが広げていた横断幕には「~憲法改正支持~ 安倍政権を支えよう」と書かれていました。鈴木エイト氏が「参院選後、ユナイトの演説は『憲法改正』一色に」と指摘しているように、ユナイトは憲法改正でも安倍政権を支援してきました。
【2】統一協会と濃厚接触政党「自民党」の改憲論
自民党は統一協会に有利になる憲法改正の主張をしたり、自民党改憲論は統一協会の影響を否定できない内容となっています。
(1)統一協会に有利になる自民党改憲論
憲法20条では「いかなる宗教団体も、……政治上の権力を行使してはならない」とされています。一方、2012年の自民党憲法改正草案では「政治上の権力を行使してはならない」の個所が削除されています。こうした憲法改正がされれば、統一協会が統一教会の教義に基づき政治権力を行使しても憲法違反とは言えなくなります。自民党は統一教会に有利になる憲法改正の主張をしていました。
(2)自衛隊明記の憲法改正
安倍首相が自衛隊明記の憲法改正を主張したのが2017年5月、統一協会が同様の主張をしたのは2017年4月です。もともと安倍氏は9条2項を削除した上での自衛隊の明記を主張していましたが、突然、2項をそのままで自衛隊の明記を主張したことは波紋を呼びました。1か月前に統一協会が主張した自衛隊明記の憲法改正の影響を安倍氏が受けていないと言えるのでしょうか?
【3】統一協会と濃厚接触にある自民党の改憲に対して
(1)改憲論について自民党は説明責任を
自民党は選挙や憲法改正運動で統一協会から濃厚な支援を受けてきました。自民党が主張する憲法改正論も統一協会に有利になったり、統一協会の影響を否定できない内容になっています。統一協会の影響を受けた可能性を否定できず、内容も類似している自民党の改憲論に賛成できるでしょうか? 統一協会の影響を否定できない自民党改憲論には決して賛成できないとの世論づくりが必要になります。
一方、自民党は依然として憲法改正にむけた動きを進めようとしています。そうであれば、たとえば憲法審査会では自衛隊明記の憲法改正、緊急事態条項、家族条項などが統一協会の影響を受けていないと言えるのか、自民党を徹底的に追求し、自民党に説明責任を果たさせる必要があります。
(2)外国資本等の規制の必要性
さらには改憲手続法(憲法改正国民投票法)に関しては、外国政府や外国集団の影響を受けないための法改正が必須です。2021年の改憲手続法改正の国会審議の際にも、自民党は外国政府や外国の団体が国民投票に影響を及ぼす事態を阻止するための法改正に否定的でした。しかし、外国の団体が日本の憲法改正に影響を及ぼす事態となれば、国のあり方を決めるのは国家構成員としての「国民」という「国民主権」(憲法前文、1条)からは正当化できません。
韓国幹部の支配下にある統一協会は外国の団体であり、「国民主権」を根拠に法的な規制が必要です。外国政府や外国団体への法的規制をしないままで憲法改正国民投票を実施しようとするのであれば、自民党は依然として憲法改正国民投票でも統一教会から支援を受けようとしていると疑わざるを得ません。外国政府や外国資本の規制をしないでの憲法改正国民投票は「国民主権」からは正当化できません。
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