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【壊憲・改憲ウォッチ(9)】静かなる「憲法改正の動き」

2022年4月27日

飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)

いま、メディアでは「憲法改正の動き」がそれほど報じられてはいません。

ただ、実は憲法改正にむけた政治は着々と、そして静かに進められています。

衆議院の憲法審査会の動きです。

通常、予算委員会が開催されている間、憲法審査会は開催されないというのが慣行でした。ところが2022年2月10日、こうした慣行が破られ、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の改憲4政党の意向で衆議院では憲法審査会が開催されました。

その後、3月10日を除き、衆議院では毎週木曜日に憲法審査会が開催されてきました。

ほぼ毎週の憲法審査会の開催は、憲法改正にむけた「実績づくり」となります。

2022年3月や4月における衆議院の憲法審査会では、「国会議員の任期延長」の憲法改正論議について自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の改憲4政党の主張はほぼ一致しています。

緊急事態条項についても自民党、日本維新の会、国民民主党は、緊急事態の対象として①戦争、②内乱・テロ、③自然災害、④感染症の拡大等、効果として①人権制約も含む緊急政令の発令、②財政処分を可能にする憲法改正を主張しています。

このように、衆議院の憲法審査会では「国会議員の任期延長」や「緊急事態条項」について、改憲4政党で意見のすり合わせがなされています。

自民党は参議院選挙前までは、全面的な憲法改正の動きを控えています。

ただ、参議院選挙後、衆議院でほぼ毎回憲法審査会が開催されてきたことを「実績」として、改憲4政党が「十分な議論をしてきた」「議論は尽きた」と主張し、憲法改正国民投票に持ち込む可能性があります。

2021年6月、公職選挙法の7つの項目に合わせた改憲手続法(憲法改正国民投票法)が改正されましたが、この改正は改憲4政党が十分な議論もしないで国会での数の力で成立させたものです。

2022年3月3日、衆議院憲法審査会では憲法56条1項の「出席」に関して、オンライン出席が認められるとの「とりまとめ」をしたうえで、それを衆議院議長に提出しました。

この「とりまとめ」も十分な議論がなされたわけではありません。

繰り返しになりますが、2月10日以降、衆議院でほぼ毎回憲法審査会が開催されてきたことで、参議院選挙後、改憲4政党が「十分な議論をしてきた」「議論は尽きた」と主張し、憲法改正国民投票に持ち込む可能性があります。

毎週木曜日、衆議院で憲法審査会が開催されることで、「静かなる憲法改正の動き」が進んでいることに警戒が必要です。

参議院選挙の結果次第、具体的には自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などの改憲4政党が国会の議席の3分の2以上を占める事態となれば、憲法改正が現実味を帯びます。

参議院選が終われば2025年まで、場合によっては3年間、国政選挙がない可能性があります。

こうしたことも考えた上で、2022年の参議院選挙で私たちは主権者として適切に判断することが必要になります。