【壊憲・改憲ウォッチ(6)】ウクライナに平和を!原発に手を出すな!3.21市民アクションでの発言から
飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)
3月21日、代々木公園で行われた「ウクライナに平和を!原発に手を出すな!市民アクション」で発言しました。今回はその発言の内容を紹介させて頂きます。
いま、プーチン・ロシアがウクライナに侵略戦争をしています。この戦争は多くの市民の「いのち」や「くらし」を奪う戦争であり、決して許せません。
明確な「国際法違反」であり、個人の尊厳と人権の保障を求める国連憲章前文、国連憲章2条1項の「すべての加盟国の主権平等の原則」、「平和的手段による紛争解決」を求める2条3項、「武力不行使の原則」を定める2条4項に明確に違反します。ジュネーヴ条約第一追加議定書51条2項では文民への攻撃が禁止されています。56条1項では「原子力発電所」への攻撃が禁止されています。プーチン・ロシアのウクライナへの侵略戦争はこれらの規定にも違反します。
プーチンにはウクライナでの武力行使の即時中止と撤退を求めます。「武力の行使」を断じて認めないという決意を私たちは世界中の市民とともにプーチンに示すべきです。
にもかかわらず、日本ではプーチン・ロシアのウクライナ侵略を契機に「核」をめぐって2つの議論が台頭しています。一つは核共有論、もう一つはエネルギー不足を理由とする原発再稼働です。どちらの議論も「支離滅裂」で危険な主張です。
まず「核共有論」。安倍晋三氏や橋下徹氏、日本維新の会や国民民主党は核共有論を主張しています。どのような核を想定しているのでしょうか? 「戦術核」でしょうか? それとも「戦略核」でしょうか?
ドイツに配備されているのは「戦術核兵器」ですが、冷戦時代の西ドイツがソ連の侵攻を受けた場合、西ドイツに侵入したソ連軍の部隊をせん滅させるために使うといった想定をしていました。これを日本に当てはめると、「例えば南西諸島が中国の人民解放軍によって侵略された場合に自衛隊がアメリカの核で応戦するというような概念」(小谷哲男明海大学教授(安全保障論))となります。本当にこんな議論をするのでしょうか?
それとも「戦略核」でしょうか? そうであればそれこそロシアに攻撃の口実を与える危険性があります。そもそもプーチン・ロシアのウクライナ侵略の理由のひとつはウクライナがNATOに加盟し、ミサイルなどを置かれることを警戒したからです。
そもそも「核」でロシアと対抗しようなどと考えることは適切でしょうか? 2021年1月時点で、ロシアは6375発の核兵器を所有しているとされます。1961年10月に旧ソ連が実験した核兵器「ツァーリ・ボンバ」はTNT爆薬で50メガトンに相当し、広島と長崎の原爆の約1500倍の威力を持ちます。こうした核保有国と本当に核戦争をしようなどと考えるのでしょうか?
実際に使うことを想定しているのではなく「抑止力」というのかもしれませんが、ロシアに核の脅しが通用すると思っているのでしょうか?
安倍晋三氏は橋下徹氏、日本維新の会や国民民主党の核共有論は危険すぎます。核共有との危険極まりない政策でなく、核兵器禁止条約に批准し、核廃絶の先頭に日本が立つべきです。
次に原発再稼働。ロシアが脅威だというのであれば、原発再稼働も支離滅裂です。原発が攻撃されたりサイバー攻撃を受ければ、日本が壊滅的破壊を被ります。
さらに、今年3月11日で東日本大震災からまる11年となりましたが、いまだに震災と原発事故の避難者は3万3365人もいます。原発は平時でも人間関係にひびを入れたり、近隣住民の健康などに悪影響を及ぼします。
さらに福島第一原発事故のために生命や健康が損なわれた結果、憲法13条の生命権や幸福追求権が奪われました。家族や友人とばらばらに住むことを余儀なくさせることで、憲法13条の幸福追求権が奪われました。自分の故郷を追われることで、やはり憲法13条の幸福追求権や憲法22条の居住の自由を奪われました。
今年で福島第一原発事故からまる11年たちますが、いまだに帰還困難区域の大部分は解除のめどが立っていない地域があります。こうして原発は人々の健康や幸せを奪います。将来の世代のためにも脱原発に進むべきです。
福島第一原発事故を受け、ドイツは脱原発に政策転換をしました。その際、原発の利益は1世代だが、原発の負の遺産は10万年、子どもや孫、ひ孫、……200世代だという発言がドイツではされていました。将来の世代に健康で幸せに暮らせる社会を残すためにも、私たちは脱原発にむけて活動することが求められます。
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