安倍・菅自公政権と本質は何も変わらない岸田自公政権
戦争をさせない1000人委員会事務局次長の飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)より、あらたに登場した岸田政権の本質について、論考を寄せていただきました。
安倍・菅自公政権と本質は何も変わらない岸田自公政権
飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)
1.岸田文雄新首相の誕生
菅氏が国民の支持を失い自民党総裁選に出馬せず、首相が岸田文雄氏に代わりました。岸田氏は「自民党は変わった」とのイメージを演出しています。しかし本当に自民党は変わるのでしょうか。
2.岸田首相の発言
(1)自衛隊法改正
2021年9月5日、自民党の総裁選への立候補を表明した岸田文雄氏はフジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』に出演し、日本大使館のアフガニスタン人職員ら関係者を自衛隊機で救出できなかったことについて、「反省しなければいけない」と述べました。現地の安全確保が自衛隊派遣の要件となっている自衛隊法について、岸田氏は「国民の感覚からしてどうなのか。ぜひ法改正について考えてみたい」と述べ、首相に就任すれば自衛隊法の改正を検討する考えを示しました。
(2)辺野古新基地建設
10月8日、岸田首相は就任後初の所信表明演説を行い、「普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古沖への移設工事を進める」との考えを示しました。一方、沖縄振興策には言及しませんでした。
(3)敵基地攻撃能力の保有
10月15日、岸田首相は読売新聞のインタビューに応じ、敵のミサイル発射基地などを自衛目的で破壊する「敵基地攻撃能力」の保有について、改定する「国家安全保障戦略」への明記に意欲を示しました。10月8日の所信表明演説では「国家安全保障戦略」の改定と同時に「防衛計画の大綱」や「中期防衛力整備計画」改定の意向も示しました。
(4)憲法改正
9月8日、自民党総裁選に出馬を表明した岸田氏は首相に就任した場合、任期中に憲法改正を目指す考えを示しました。自民党改憲4項目に言及し、「国会の議論を進め、国民投票に持ち込む。実現すべく最善の努力をしたい」と述べました。10月8日の所信表明演説でも憲法改正を目指すと発言しました。
10月6日、自民党が次期衆院選 (19日公示、31日投開票)で示す公約案の骨格が判明しました。「国民の幅広い理解を得て、今を生きる日本人と次世代への責任を果たす」として、自民党改憲4項目の実現を目指すことが明記されています。
(5)森友学園問題について
9月2日、岸田氏は「森友学園問題」で「国民が納得するまで説明する」と発言しました。しかし9月7日、岸田氏は「再調査するとは言っていない」と発言しました。この発言に関して芥川賞作家の平野啓一郎氏はツイッターで「笑った。この人は、永遠にこういう政治家でしょう」と岸田氏を批判しています。
(6)コロナ対策
9月18日に行われた自民党総裁選の公開討論会に関して倉持仁医師が19日、ツイッターで「最大の争点がコロナ対策になっていないことに唖然とし、暗澹たる思いになります。20ヶ月何して何をみてきたんでしょうか?」と批判しました。コメント欄には「少なくとも新型コロナ患者の在宅死をゼロにする、とは総裁候補の誰も言っていません」「正直言ってコロナ対策もままならないのに当人やメディアまで総裁選中心の報道」「コロナで死ぬ人もいますが、経済で行き詰まって自殺する人もいます」などの意見が寄せられました。
3.安倍・菅自公政権と本質的には変わらない岸田自公政権
以上、岸田首相の言動等を紹介しました。岸田氏の言動を見れば、岸田自公政権も安倍・菅自公政権と本質的に何も変わらないことが分かるでしょう。
安倍自公政権はコロナ禍で国民が大変な状況にある中、「アベノマスク」「改正検察庁法案」「Go To トラベル」など、「利権」「私物化」の政治をしてきました。特にコロナ感染拡大のどさくさに紛れて、政治家が起訴されないことに道を開く「改正検察庁法」を成立させようとした安倍自公政権は極めて悪質です。
コロナ感染拡大で非正規社員などが大変な状況にもかかわらず、安倍・菅自公政権は大変な状況にある市民の支援に熱心ではありませんでした。その結果、自殺者は増加しました。菅自公政権も「日本学術会議任命拒否問題」を引き起こし、「デジタル監視法」「改正国立大学法人法」「改正改憲手続法」「土地等監視及び利用規制法」制定など、「戦争できる国づくり」を進めてきました。今まで岸田氏の言動を見れば分かるように、安倍・菅氏と本質的には変わっていません。
2020年度、コロナ感染拡大で「不登校」となった小中学生は約19万人、小中高生の自殺も増加しています。しかし岸田氏は「敵基地攻撃能力の保有」「国家安全保障戦略改正」「自衛隊法改正」「憲法改正」など、安倍、菅自公政権と同様に「戦争できる国づくり」をすすめることを明言しています。
岸田首相も「森友」「加計学園」「桜の会」「河井克行・案里夫妻の買収事件」などの「政治腐敗」の改善にとりくむことなく、それどころか大臣室で現金100万円を受け取り、大臣を辞任した甘利明氏を自民党の幹事長にしました。甘利氏からは納得のいく説明はされていません。
「政治腐敗」「政治と金」の問題、「説明責任」などでも岸田自公政権は安倍、菅自公政権と何も変わらないでしょう。国民のための政治をせずに政治を私物化し、「戦争できる国づくり」をすすめてきた安倍・菅自公政権。今までのきわめてわずかな期間の言動でも、岸田自公政権も安倍・菅自公政権と変わらず、「敵基地攻撃能力の保有」「自衛隊法改正」「辺野古新基地建設」推進を明言しています。
10月31日には衆議院選挙があります。「戦争できる国づくり」を進める自民党・公明党に政治を任せることが将来の世代のためなのか。私たちは将来の世代のためにも選挙でも適切な意志表示をすることが求められます。
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