選挙に行き、投票しよう
戦争をさせない1000人委員会事務局次長の飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)より、今秋予定される衆議院選挙に向け、論考を寄せていただきました。
選挙に行き、投票しよう
飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)
1.はじめに
いま、テレビなどでは自民党総裁選のニュースであふれています。確かに重要です。ただ、11月28日までには必ず衆議院選挙が行われます。私たちの生活と暮らしが良くなるためには、自民党総裁選一色に染まっているテレビ報道などに影響されず、今までの政治を適切に踏まえて投票することが必要です。
2.安倍自公政権のコロナ対策
2020年5月28日、私は「戦争をさせない1000人員会」ウェブサイト掲載記事で、「失業者の増加は自殺者を増加させ、2021年には自殺者数が4万人以上との指摘もある」と指摘しました。失業や倒産が増加すれば、自殺者が増加するのは今までの統計からも明らかです。そこでコロナ対策の重要性を主張しました。
2020年5月当時、安倍首相や自民党・公明党の政府は、政治家が犯罪を犯しても裁かれないことに道を開く「改正検察庁法」の成立を目指していました。コロナ感染のどさくさに紛れてこうした法律の成立を目指すなど、自民党や公明党の政治は極めて悪質です。「改正検察庁法案」は多くの市民の反対により廃案に追い込まれました。しかし、こうした政治をしたため、安倍自公政権は十分なコロナ対策ができませんでした。
その結果、「コロナ禍が続く中、若い女性の自殺が増えている。30代以下の女性の8月の自殺者数は193人と、前年同月に比べて74%も増えた」(『朝日新聞』2020年10月6日付(夕刊))という状況になりました。自殺者、とくに若い女性の自殺者が増えた一因は、当時の安倍晋三首相、菅義偉官房長官、自民党・公明党の政治家たちが十分なコロナ対策をしなかったことにあります。
3.菅自公政権の政治
安倍首相が辞職し、菅義偉氏が首相になりました。菅氏が首相になったときにも「自殺者が夏場から急増している。新型コロナウイルスの流行が長引き、精神面にも悪影響が出ているのではないか。一人でも多くの命を救う対策を急がねばならない」(『読売新聞』2020年10月8日付〔電子版〕)と指摘されていました。菅氏はコロナ対策に全力を注ぐべきでした。ところが菅首相は「日本学術会議任命拒否問題」を起こし、「一人でも多くの命を救う対策を急」ぐ政治をしませんでした。
8月25日、テレビ番組「バイキングMORE」で菅首相の自宅療養者への体制作り発言に二木芳人教授は「今頃、こんなこと言っていちゃあ困る」、「 こういうふうになることを想定して、場合によっては2か月ぐらい前から準備しておく」と批判しました。二木教授が2か月ぐらい前と言いましたが、その約2か月前、菅自公政権は自衛隊を明記する憲法改正のための「国民投票法(改憲手続法)」や市民を監視する「土地等監視及び利用規制法」など、「戦争できる国づくり」のための法律を十分な審議もせずに成立させました。
8月、入院できずに自宅療養を余儀なくされる感染者が多く出て、十分な治療を受けられずに亡くなる人も出ました。「国民投票法(改憲手続法)」や「土地等監視及び利用規制法」を成立させるのではなく、菅首相や自民党・公明党の政府がコロナ対策に全力を挙げていれば、入院できない感染者を減らすことも可能だったのではないでしょうか。
なお、菅自公政権は2021年5月21日、病床削減や医師数抑制を内容とする改正医療法を成立させました。コロナ感染が拡大し、「医療崩壊」が言われる中、病床数や医師数を削減させる法改正をしました。ちなみに2020年1月末から2021年1月末までの1年間で、安倍自公政権、そして菅自公政権は2万1174床も病床を削減させました。コロナ感染が拡大する中、病床削減のための法改正をする、自民党や公明党の政治は適切でしょうか?
4.選挙に行き、投票しよう
9月3日、小泉環境大臣は菅氏を「誰よりも仕事をした首相」と語りました。しかしコロナ感染拡大の中、菅氏や自民党・公明党はコロナ対策に全力を挙げるのでなく、「デジタル監視法」「改憲手続法」「土地監視及び利用規制法」など、市民を監視し、「戦争できる国づくり」のための法律の制定に必死になっていました。菅首相が変わるので、政治も変わると思うかもしれません。
しかし、ニュースを見れば分かると思いますが、依然として安倍晋三氏や麻生太郎氏は自民党内に影響力があります。新しい自民党総裁は彼らの意向を断ち切ることはできるのでしょうか? 河野太郎氏の原発に関する言動の変化、安倍晋三氏などの影響がないといえるでしょうか? 9月14日段階で3人の候補者が出ていますが、「自衛隊法改正」だの「敵基地攻撃能力の保有」だの、コロナ対策でなく「戦争できる国づくり」にむけた発言を繰り返しています。誰が自民党総裁になっても、自民党の政治は本質的には大きく変わりません。
なによりいま一番重要なのは「コロナ対策」ですが、テレビでもたくさん紹介されているように、自民党の国会議員は総裁選での権力闘争に必死になっています。一方、テレビでほとんど紹介されていないように、自民党や公明党の政府はコロナをほとんど進めていません。コロナ対策の予備費などのため、野党は臨時国会の開催を菅自公政権に要求しましたが、安倍自公政権や菅自公政権は臨時国会を開きませんでした。
「自民党や公明党の政治はひどくても、立憲民主党よりもまし」との意見もあるかもしれません。ただ、考えてみてください。東日本大震災の時の民主党と今の自民党・公明党政権。どちらも危機には適切に対応できていません。
ただ、民主党政権は臨時国会を開催し、対応しようとしました。一方、安倍自公政権、菅自公政権はコロナ対策のための臨時国会を開くなどの対応もしませんでした。政治家が犯罪を科しても裁かれない可能性を生じさせる「改正検察庁法」のような悪質な法律を自民党・公明党はコロナ感染のどさくさに紛れて成立させようとしましたが、東日本大震災の際、民主党はこうした悪質なことはしませんでした。コロナ対策を口実とした「アベノマスク」や「Go To トラベル」など、「利権」を疑われる政治を安倍自公政権はしてきましたが、東日本大震災の際の民主党はこうした政治をしませんでした。安倍自公政権下での「森友」「加計」「桜を見る会」など、これほど公然と「私物化」を疑わせる政治は民主党政権ではありませんでした。
安倍晋三氏は民主党政権を「悪夢のような政権」と発言しましたが、どちらが「悪夢」でしょうか? ネットには「民主党政権より安倍政権の方が悪夢」との書き込みがなされています。
私たちの生活や暮らしが良くなるかどうか、平和な社会で暮らせるかどうかは、主権者である国民が政治にどのように対応するかで決まります。11月28日までには必ず衆議院選挙があります。今までの自民党政治、そして選挙などで自民党に協力してきた公明党、自民党の主張に賛同してきた日本維新の会に対して、私たちが選挙でどのような意志表示をするか。主権者として適切な意志表示をすることが求められます。選挙に行き、投票しましょう。
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