【声明】「改憲手続法」改正案の採決強行に反対する
戦争をさせない1000人委員会は、「改憲手続法」改正案の採決強行に反対する声明を発出しましたので、ここにお知らせします。
「改憲手続法」改正案の採決強行に反対する
2021年4月28日
戦争をさせない1000人委員会
2021年4月段階において、菅自公政権や一部野党は「改憲手続法」(日本国憲法の改正手続に関する法律)の改正にむけての動きを進めている。しかし今、政治が全力で取りくむべきはコロナ感染症への対策である。多くの市民が求めているのは憲法改正や憲法改正の一里塚となる「改憲手続法」改正ではない。私たち戦争をさせない1000人委員会は「改憲手続法」の改正を目指す菅自公政権に対して強く抗議する。
そもそも、日本国憲法が社会の現実に適合せず、したがって憲法を改正せよとの声が多数の市民から上がっているわけではない。2020年8月28日、辞職の際の記者会見で「国民的な世論が十分に盛り上がらなかったことは事実であり、それなしには進めることはできないだろうと改めて痛感している」と発言したように、市民が憲法改正を求めていないことは安倍前首相自身も認めている。にもかかわらず、憲法改正にむけて公職選挙法並びの7項目の「改憲手続法」改正を進める動きは「不要不急」と言わざるを得ない。
さらに「改憲手続法」改正の議論をするのであれば、主権者の意思が公平かつ適切に反映される制度設計のための議論が必要となる。具体的には「最低投票率」あるいは「最低得票率」、テレビCM規制、インターネット規制、政党への外資規制の問題などを真摯に議論し、「カネで買われた憲法改正」とならないための、根本的な議論こそ求められる。ところが第2次安倍政権以降、そして菅政権で開催されてきた衆議院憲法審査会では、与党はこうした問題を後回しにして十分な議論を回避してきた。
百歩譲って「公選法並び7項目」の改正を内容とする「改憲手続法」の議論が必要だとしても、「期日前投票の弾力的運用」や「繰延投票の告示期間の短縮」は、「投票環境の向上」という法改正の目的に反する事態をもたらす可能性が国会でも指摘されている。これらの問題に対する自民党や公明党の答弁は支離滅裂としか言いようがない。さらには「洋上投票」「在外投票制度」「共通投票所」などの項目でも「投票環境の向上」という視点からはさらなる議論が必要である。しかし菅政権はこれらの問題にも真摯に向き合って議論するのではなく、数を恃んで採決を強行しようとする姿勢が窺われる。こうした菅自公政権の対応こそ、市民の意思を反映させるための公平な国民投票制度を構築しようという気がないことを示している。
4月22日の衆議院憲法審査会でも、自民党・公明党の議員は公選法並び7項目の「改憲手続法」の採決を直ちに行い、憲法改正原案の議論をも主張した。拙速な議論で公選法並び7項目の「改憲手続法」の改正を目指す理由は、上記主張からも明白なように、憲法改正にむけた政治を進めるためである。また、自民党は「自衛隊明記」「緊急事態条項の導入」「教育の充実」「合区解消」などを主張した。自民党が主張する「自衛隊明記」「緊急事態条項」は、日本国憲法の「平和主義」「民主主義」「基本的人権の尊重」という基本原理を蹂躙する内容となっている。「教育の充実」を実現するためには法改正や予算措置で可能であり、憲法改正は必要ない。「合区解消」は「投票価値の平等」を空洞化させ、自民党に有利な選挙区を憲法改正によって作り上げることになる。いずれの改正も「有害無益」と言わざるを得ない。そして、憲法改正を実現するために公選法並び7項目の「改憲手続法」の採決を十分な議論もせずに強行的に採決しようとする政治こそ、主権者の意思を聞こうとしない姿勢を証明するものであり、「国民主権」原理とは相容れないものである。
以上の理由から、現在進められている公選法並び7項目の「改憲手続法」改正案の採決の動きに対し、戦争をさせない1000人委員会として強く反対する。
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