【壊憲・改憲ウォッチ(24)】「安保3文書」と軍事訓練
飯島滋明(名古屋学院大学、憲法学・平和学)
【1】共同使用の増加
2022年12月16日、岸田自公政権は「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の「安保3文書」を閣議決定しました。
安保3文書では軍事訓練の増強も明記されています。
「国家防衛戦略」14ページでは以下のように記されています。
「日米一体となった抑止力・対処力の強化の一環として、日頃から、双方の施設等の共同使用の増加、訓練等を通じた日米の部隊の双方の施設等への展開等を進める」(太字強調は筆者。以下同様)
「国家防衛戦略」12ページでも以下のように記されています。
「防衛上のニーズを踏まえ、総合的な防衛体制の強化のための府省横断的な仕組みの下、特に南西諸島における空港・港湾等を整備・強化するとともに、既存の空港・港湾等を運用基盤として、平素からの訓練を含めて使用するため、関係省庁間で調整する枠組みの構築等、必要な措置を講ずる」
自衛隊の準機関紙『朝雲』(2023年1月19日付)では、1月11日(日本時間12日)に「日米安全保障協議委員会」(2+2)で、「南西諸島を含む地域においては、日米の施設の共同使用を拡大し、共同演習・訓練の増加に責任ある関与(コミット)を果たしていくことを確認した」ことが報じられています。
【2】最近(2023年1月)での日米軍事訓練
ここで近日中に予定されている日米の軍事訓練を紹介します。
(1)コープ・ノース23
2023年1月23日(月)から3月4日(土) (訓練期間は2月8日(水)から2月24日(金))、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に資するためとして、日米豪共同訓練「コープ・ノース23」が実施されます。
主要参加部隊等は第8航空団(築城)、第9航空団(那覇)、航空戦術教導団(百里等)、航空救難団(入間等)、警戒航空団(浜松)、第1輸送航空隊(小牧)、第2輸送航空隊(入間)、第3輸送航空隊(美保)、航空保安管制群(府中)、航空気象群 (府中)及び航空機動衛生隊(小牧)になります。
主要訓練項目は「防空戦闘訓練、戦術攻撃訓練、滑走路被害復旧訓練及び航空医療搬送訓練」等になります。
「コープ・ノース22」では主要訓練として挙げられていなかった「滑走路被害復旧訓練及び航空医療搬送訓練」が「コープ・ノース23」では明記されています。
「滑走路被害復旧訓練及び航空医療搬送訓練」が明記されたことじたい、日本の空港が攻撃されること、戦闘で負傷者が出るのを想定しはじめたと考えられます。
(2)アイアン・フィスト23
2023年2月16日(木)~3月12日(日)、陸上自衛隊は、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化するとの名目で、陸上自衛隊は「アイアン・フィスト23」を実施します。
水陸機動団(長崎)や米軍の在沖縄第3海兵機動展開部隊が参加予定で、キャンプ・ハンセン(沖縄)、高遊原分屯地(熊本)、日出生台演習場(大分)、徳之島、喜界島(鹿児島)等で「陸上戦闘訓練 、実弾射撃訓練 、兵站・衛生訓練」が実施されます。
日本で「アイアン・フィスト」が行われるのは初めてになります。
【3】どうするか
以上のように、「安保3文書」では自衛隊基地や在日米軍基地の共同使用の増加が明記されています。
【2】で紹介したように、「実際の戦争」を意識した訓練も増加しています。
たとえば2016年、与那国島には自衛隊が配備されました。
自衛隊誘致に賛成した外間守吉町長〔当時〕は議会で、「米軍が来るときは反旗を翻して抵抗する」と答弁しました(『沖縄タイムス』2013年9月21日付)。
しかし2022年11月、日米共同統合訓練「キーン・ソード」にはC-2輸送機が16式機動戦闘車を空輸して与那国島におろして公道を走行させる訓練をしました。
同時に与那国島ではアメリカ海兵隊と自衛隊の作戦会議の訓練もされました。
自衛隊基地には必ずアメリカ軍も来ます。
アメリカ軍が与那国島に来ることをいまの段階で批判しても「手遅れ」なのです。
これから基地が作られる可能性がある場所、たとえば佐賀空港にも陸自オスプレイ17機を含む自衛隊の部隊が配備されればどうなるか。
佐賀も自然豊かで本当に良いところですが、佐賀空港にオスプレイ基地等ができれば、「安保3文書」で打ち出されているように、「日頃から、双方の施設等の共同使用の増加」は増加します。
佐賀の上空には自衛隊やアメリカ軍のオスプレイが日常的に飛び回り、佐賀の景色や雰囲気は一変するでしょう。
こうした状況になる前に、私たちが対応することが求められます。
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